顎関節症

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顎関節症1型
主症状  咀嚼筋障害が主で,筋痛・運動痛・運動障害がある
診査方法 1.触診…筋緊張スパズムによる咀嚼筋の圧痛
2.下顎運動…重症の場合を除いて制限は少ない.
3.顎関節断層X線診査…関節部の器質的な変化,異常がない
顎関節症2型
主症状 関節包・靭帯障害を主徴候としたもの(大開口およびかみしめ時の関節痛)
診査方法 1.触診…顎関節部に圧痛を認めることが多い
2.下顎運動…顎関節部に限局した運動痛
3.顎関節断層X線診査…関節部の器質的な変化,異常がない

顎関節症3型
主症状 下顎頭運動異常 …クリック, 開口障害
診査方法 1.視診や機器による運動路軌跡の診査(矢状・前頭面)
…開閉口時のクリックを触知,運動路の変化はあるが制限はない.Ⅲ型-a
…開口量は制限され,開口路は患側に偏位する.Ⅲ型-b
2.顎関節断層X線診査
…円板の前方転移に伴う下顎頭位の後方偏位が認められることが多い.
3.Ⅲ型-a,b
…ほとんどの場合下顎頭は最大開口時に関節結節を越えない.Ⅲ型-b
…Ⅲ型-aでは顆頭部の骨変化は少ないが,Ⅲ型-bでは骨変化は多くなる
4.MRI
…関節円板に関する情報すなわち,円板の形態,構造,位置,動態の異常 
を知ることができる

顎関節症 4型
主症状 退行性病変を主徴候としたもの
診査方法

パノラマX線写真,断層X線写真によるTMJ像

a,連続性と濃淡の変化 骨皮質の断裂(エロージョン),骨硬化,
骨皮質の肥厚,
b,骨外形の変化 下顎頭と関節結節の扁平化,骨棘,陥凹
以上のように日本顎関節学会のガイドラインが示されていますが、その症状は多様で、治療の成果も一定ではありません。
顎関節症の原因

来院される患者さんのこれまでの治療から大きく分けて顎関節の原因や年代など2つの様相が考えられます。

1つは、ほとんどが天然歯で構成される患者さんの場合(若年者が主)で噛み合わせよりも生活習慣の悪習癖や外傷が大きな原因と考えられます。

下記に顎関節症を引き起こす可能性のある気をつけたい生活習慣の悪習癖をあげています。該当する項目はいくつありますか?

TMD悪習慣

  

もう1つは、歯の欠損や補綴物が多い患者さんの場合(高齢者が主)で生活習慣の悪習癖よりも噛み合わせが相対的に原因として高いと考えられます 。

では、実際に当医院にて治療させていただいた患者様の症例を紹介させていただきます。

 
gaku01_s.jpg

ご覧のとおり、患者さんの主訴は、食事後の左頬の疼痛でした。

では、次にこの患者さんの口腔内の状態を説明していきます。 

gaku02.jpg

口の中は補綴物(金属冠)がたくさんあり、歯は磨り減った状態でした。

この状態および頬の疼痛より、噛み合わせた時の下顎の位置のズレが 疼痛の原因の一つと考えられました。

そこで次に下顎の位置の診査を行いました。

ngenninn01.jpg
 

4つの写真の内、上の2つの写真の方法で下顎の適正な位置をチェックします。

中心位とは、噛み合わせたときに下顎が一番安定すると言われている位置です。

習慣性閉口位とは、噛んだ時に日頃一番かみ合わせている位置です。

下2つの写真を比較すると、習慣性閉口位が(患者さん側からみて)左にズレていることが 分かります。

そこで下顎の左方のズレが疼痛の原因と考え、下顎のかみ合わせの位置を 適正化した補綴物を製作しました。

それが次の写真です。  

gaku04.jpg
 

CO(中心位)とCR(習慣性閉口位)の位置を一致させた補綴物を装着した状態です。
 
下顎骨は顎関節の骨(頬骨の位置にあります)まで関節円板をはさんで位置づけられています。
 この例では、咬頭嵌合位が左にずれることによって左顆頭は後方に押しやられ、顎関節後方部の結合組織部を圧迫します。そのようなメカニズムで顎関節の痛みを引き起こしていたのです。
 
今回、そのズレを修正した補綴治療によって左顎関節の疼痛は完全に消失しました

診療に携われる方に理解していただきたいことは 、このような下顎のズレがある場合、咬合紙を咬ませて一生懸命咬合調整してもずれがなおることはありません。下顎からそれまでの咬合のしがらみをなくし、下顎全体の位置を正し、その位置で咬合調整なり、修復治療なりをすすめていく必要があるのです

 
 

 
 


 

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